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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(行ツ)6号 判決 1968年10月08日

上告人

熊本国税局長

星川辰治

指定代理人

樋口哲夫

ほか一名

被上告人

破産者荻本又喜

破産管財人

広石郁磨

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人樋口哲夫、同坂梨良宏の上告理由について。

破産法四七条二号が、国税徴収法または国税徴収の例によつて徴収することのできる請求権で破産宣告後の原因に基づくもののうち、「破産財団ニ関シテ生シタルモノ」に限つて財団債権とした趣旨は、それが破産債権者にとつて共益的な支出であることにあるものと解すべく、従つて、その「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権とは、破産財団を構成する各個の財産の所有の事実に基づいて課せられ、あるいはそれら各個の財産のそれぞれからの収益そのものに対して課せられる租税その他破産財団の管理上当然その経費と認められる公租公課のごときを指すものと解するのを相当とする。

ところで、所得税は、例外的に分離課税の認められる特殊な所得は別として、一歴年内における各個人の財産、事業、勤労等による各種の所得を総合一本化した個人の総所得金額について、個人的事由による諸控除を行なつたうえ、これに対応する累進税率の適用によつて総合的な担税力に適合した課税を行なうことを目的とした租税であつて、所得源に応じて課税するようなことは、別段の定めのないかぎり、所得税法の予定しないところである。従つて、納税者が破産宣告を受け、その総所得金額が破産財団に属する財産によるものと自由財産によるものとに基づいて算定されるような場合においても、その課税の対象は、それらとは別個の破産者個人について存する前叙の総所得金額という抽象的な金額なのである。このように、所得税は、破産財団に関して生じた請求権とは認めがたいものなのであるから、破産財団に属する財産の譲渡所得に対応する所得税額を区分して確定することを可能であるとし、その所得税を財団債権として徴収できるものとする論旨は、到底肯認しがたい。

要するに、本件所得税債権を破産法四七条二号に該当しない旨を判示した原判決は正当であつて、これに所論の違法は認めがたく、論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 田中二郎 下村三郎 松本正雄)

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